第一話 病気を理解する…うつ病

「うつ病」とはどのような病気なのでしょうか?

「うつ病」をよく知らない人は、「感情の弱さ」、「本人の気持ちの問題」等の間違った認識をされます。しかし、「うつ病」は生物学的な基礎があり、脳が関係している病気です。ストレスや疲れによって脳内の意欲や、活力などを伝達する神経伝達物質の働きが悪くなりうつ病を引き起こすと言われています。

うつ病は「こころの風邪」とよく言われていますが、風邪という言葉に「放っておいても治る」「本人の気持ちの持ち方次第で治る」と誤解されますが、風邪と違い時間が経てば自然に治る病気ではありません。ただ、「誰でもかかる可能性がある病気」という意味では「風邪」という表現は間違いではありません。うつ病は心身のエネルギーがなくなった状態です。車に例えるとガソリンがきれた状態では車は走らないように、心身にエネルギーがない状態で無理をすると心身の症状を悪化させるおそれがあります。

具体的に、どのような症状がみられますか?

うつ病は気分障害の一種です。生活に支障をきたさない軽症例から自殺を考えるといった生命に関わる重症例まであります。うつ病の症状のあらわれ方はひとそれぞれ違いますが、皆さんの中に「食欲がない」、「疲れやすい」、「よく眠れない」、「何をやっても集中力がない」といった日常の変化や、「気分が重く沈みこんでいる」、「今まで楽しかった事も楽しさを感じられなくなった」といった症状が2週間以上続いている方はいませんか?

もしこれらの症状が2週間以上続いているのであれば「うつ病」を発症しているおそれがあります。すぐにでも精神科のクリニックもしくは病院へ相談してください。「気のせい」や「疲れているのだろう」と思い込まず、うつ病のサインを見逃さないようにしてください。

どのような人が、かかりやすいですか?

誰でもかかる病気ですが、「几帳面」、「生真面目」、「律儀」、「正直」、「完全主義」、「強い責任感」など秩序を愛する人、または「人と争えない」、「他人の目を気にする」、「頼まれたことを断れない」などの他人との円満な関係を尊ぶ人がうつ病にかかりやすい傾向があります。また、男女比では女性が男性より2倍かかりやすく、20歳〜40歳前後に多いといわれています。

うつ病になりやすい、きっかけは?

きっかけは人それぞれで、大体はふだんの生活の中で発症するケースが多いです。また大きなライフイベントでも発症することもあります。例えば、「配偶者、友人など身近な人の死」「退職」「子どもの独立」などの喪失体験や、「入学」「昇進」「新築・引越し」などの獲得体験などがうつ病の引き金になることもあります。性格や、環境の相互作用によってうつ病は発症します。また、二次性のうつ病として他の病気や飲んでいる薬で起こることもあります。かかりつけ医に相談してみるとよいでしょう。

うつ病の治療方法は?

風邪などの他の病気と一緒で、病気であることを本人・家族が認識して「十分な休養をとり、薬を飲み、回復を待つ」ことが大事です。先ほども言ったようにうつ病は心身のエネルギーがなくなった状態です。まず、心身にエネルギーをためることが重要です。まずあなたが抱え込んで負担になっているもの(仕事・家事など)を排除してください。できるだけ「休養」をとり心身に疲れをためないようにすることが大事です。

それと同時に「くすりの服用」です。ストレスや疲れによって脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっている状態をお薬によって修正することで病気を改善していきます。症状によっては入院治療をすることをお勧めします。

病院での診察は、どのように行われるのでしょうか?

精神科の病院の診察は主に問診です。「どんな症状なのか」、「いつごろから症状がでたのか」、「患者さまの身の回りの環境はどのようになっているのか」などのうつ病になるまでの経緯、原因をさぐっていきます。現在の状態によってこれからの治療方法等を患者さまと一緒に最良の方法を考えていきます。

周りの人は、どのように対応したらよいのでしょうか?

服薬がきちんと行われているか確認してください。「死にたい」「自分は居ないほうがいい」など死を望んだり自己否定的なことを口にしている場合はすみやかに受診する必要があります。励ましたり気晴らしに誘ったりすると逆効果になることもありますのでやめてください。

本人は怠けているのでなく、病気であると理解してください。その上で本人の生活での負担を軽減するよう協力してあげてください。必ず治る病気なのであせらないでください。

最後に、一言お願いします。

最近体調がおかしいなと感じたら、専門のクリニックもしくは病院へ相談・受診してください。うつ病を発症しても治る病気なのであせらずに治していきましょう。うつ病を発症している間はできるだけ重大な決定をせず、十分休息・睡眠をとってください。たとえ症状が軽くなっても服薬は決して減らしたりやめたりしないでください。自分ひとりで治そうとせず、医師、身の回りの人達に相談し、一緒に「うつ病」に向き合いましょう。