第二話 病気を理解する…認知症

認知症とはどのような病気でしょうか?

「認知症」は、「認知機能が低下した状態」をきたす病気を総称したものです。「認知機能が低下した状態」とは、簡単に言うと「知能が低下した状態」であり、具体的な症状としては、「物忘れ(記憶障害)」「時間・場所などを大まかに把握することができなくなる(見当識(けんとうしき)障害)」「意欲が無い(意欲低下)」「ものごとを論理的に考え・判断することができない(思考判断力の低下)」などがあります。

老年期に「認知機能が低下」する病気としては、アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症などがあり、それぞれの病気により治療法や経過は異なります。

認知症は「年のせい」でしょうか?

年を取れば、誰もが「記憶力低下」「記憶ミス」を実感し、「ボケたなぁ」と思うことでしょう。しかし、「病気」としての「認知症」は、加齢による変化と区別されます。他の臓器と同じように、「脳」も老化しますが、老化と「認知症」は異なるものです。脳の老化がひどく(病的に)起こったものが「認知症」です。

「認知症」=「年のせい」ではないのです。

脳の老化(年のせい)と「認知症」は区別できますか?

できます。

我々専門医でも判断に悩む患者さんはいますが少数です。むしろ素人判断で「年のせい」と見なされ、症状が重くなるまで診断されない患者さんを多く経験します。

認知症を早期に発見する方法は?

まず第一に「年だから仕方が無い」と決めつけないことです。

認知症は、必ずしも「ひどい物忘れ」で始まるとは限りません。意欲が低下して、「うつ病」のようにみえたり、気弱になったり、何でも自分で決めていたのが人に頼るようになるなど、「ちょっと変わったな」程度の変化であることも多く経験します。

病院へ行く判断基準は?

「日常生活能力の変化」とでも言いましょうか、「今までできていたことができなくなった」だけではなく、「やろうとしなくなった」という段階も危険信号です。「認知症」を疑わなくとも、体の病気や、「うつ病」など他の精神疾患を心配すべきでしょう。

どの病院へ行ったら良いのでしょうか?

まずは「かかりつけの先生」に相談しましょう。決まった先生がいないのであれば、保健所に相談したり、当院を含め精神科や神経内科の医院・病院を受診することをお勧めします。

治るのですか?

全てではありませんが、治る認知症もあります。

根本的な治療法の確立されていない認知症(アルツハイマー型認知症など)が多いことも事実ですが、症状を緩和させたり、悪化させないための薬物療法や、リハビリテーションも効果的です。

「治らないから」という悲観的な思いや「あきらめ」は禁物です。

精神科には抵抗があります…

「自分が行くならまだしも、親を連れて行くのは…」というご家族もいます。悩んでいる方は、まず福祉医療相談室にお電話ください。