第五話 病気を理解する…アルコール依存症

アルコール依存症とはどのような病気ですか?

アルコール依存症は、お酒に依存してしまう病気です。お酒には依存性があります。適量をコントロールできる範囲で楽しむことができれば問題はありませんが、お酒が無くては生活できなくなったり、常に酔っている状態で、仕事や家庭などの生活に支障が出るようであればアルコール依存症といえるでしょう。
〈アルコール依存症と診断する目安には以下の項目が参考になります。〉
1. 飲酒したいという強い欲望や強迫感(振り切れない思い)
2. 飲酒をはじめるときや終わるとき、飲酒量などが自分で制御できない
3. 飲酒を中止したときに離脱症状が出る
4. だんだん飲酒量が増加していく
5. 飲酒以外に代わる楽しみや趣味などに対して興味が無くなる
6. 飲酒で身体の具合が悪くなっているのに、お酒をやめられない

以上の項目に3つ以上あてはまり、しかも1年以上続いていたら、アルコール依存症の可能性は高くなるでしょう。

具体的にどのような症状がみられますか?

アルコールの中毒症状には以下のようなものがあります。
〈アルコールの中毒症状〉
1. 不適切な行動を起こす(例、怒りっぽくなる、暴力を振るうなど)
2. 気分が不安定になる(例、気分が落ち込む、興奮するなど)
3. 家庭や仕事、人間関係が保てなくなる(仕事に行けない、家族と仲良く過ごせないなど)
4. ろれつが回らなくなる
5. 歩行が不安定になる
6. 眼振がみられる(眼球が意思にかかわらず振動する)
7. 注意力、記憶力が低下する
8. こん睡状態になる

また、アルコールの離脱症状には以下のようなものがあります。離脱症状とは、長く飲酒をしていた人が中止した場合に起こる禁断症状のようなものです
〈アルコールの離脱症状〉
1. 発汗が多くなる
2. 脈が早くなる
3. 手が震える
4. 吐き気や嘔吐
5. 幻覚症状
6. 興奮状態
7. 不安感
8. けいれん発作

どのような人がなりやすいのですか?

女性よりも男性に多くみられます。社会的にみた場合、どのような社会的立場の人にもみられます。気分障害(うつ病など)や不安障害(恐怖症、パニック障害など)などの他の精神疾患と合併することがあります。原因は一つではなく、性格的な要因や、社会的な要因などさまざまです。内気な人や、短気な人、心配性な人、敏感な人がなりやすいという考え方があります。また、不安や緊張、痛みを和らげるためにアルコールを摂取する人もいます。

身体にはどのような障害が出ますか?

長期に大量にアルコールを摂取していると身体に障害があらわれます。肝機能障害、食道炎、胃腸炎、胃潰瘍、食道静脈瘤、膵炎、筋炎、認知障害などさまざまです。重篤な病態になる障害もあり、治療が必要です。

アルコール依存症の治療はどのように行うのですか?

アルコール依存症の治療はアルコールを完全にやめる事です。そのために、以下のような治療の方法があります。これらの治療の導入には、ご本人の意思が大切です。「アルコールを完全にやめて健康になりたい」という、本人の気持ちが前提になります。
〈治療の方法〉
1. 精神療法・・・飲酒する原因に焦点をあてて、原因を克服していきます。
2. 薬物療法・・・抗酒剤を用いて、再飲酒を防ぎます。
3. 行動療法・・・アルコール依存症をもつ方に不安を軽減するための他の方法を指導します。
4. 断 酒 会 ・・・アルコール依存症を克服したい方が集まり、同じ目標をもって皆でアルコール依存症を克服します。

これらの治療プログラムは専門病院で行われており、ご本人の同意があれば治療を受けることができます。

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